なにはともあれまずは有野さんに初代パックマンをプレイしてもらうことにしました。
「数十年ぶり」という有野さんですが、さすがは「プロゲーマー」、慣れた手つきでゲームを進めます。
有野さんはプレイしながらパックマンに関する長年の疑問をここぞとばかりに岩谷さんにぶつけはじめました。


有野パックマンって、この当時のそれまでのゲームに比べてキャラクターがかわいいですよね。

岩谷ええ。実は、かわいいゲームって「パックマン」が初めてなんですよね。「パックマン」が出るまでは、 エイリアンを殺せみたいな攻撃的なゲームばかりで。当時のゲームセンターは、男のたまり場みたいな暗くて怖いイメージがあったんですね。 でも、女の子やカップルも気軽に遊びに来れるようにならないと将来はないなと思ってたので、「女の子をゲームセンターに呼ぼう」 というのをコンセプトに「パックマン」を企画したんですよ。 だから、敵キャラクターも憎めないようなものにしたくて、ゴーストをカラフルにしたんです。

有野なるほど、それで女の子はたくさん来たんですか?

岩谷ええ。ゲームが完成して、ゲームセンターに見に行ってみると、 女の子やカップルがキャーキャー言いながらやってくれてました。狙い通りでしたね。

(パックマンのキャラクターグッズもたくさん作られました。有野さんがパックマンのぬいぐるみを見ながら質問します)

有野パックマンが出た当時、こういうキャラクターグッズていうヤツは、まだないですよね?

岩谷なかったですね。でも、最初からキャラクター展開はしたいと思ってたんですよ。 パックマンをゲーム製品として出した後、グッズ展開が起こるだろうというイメージを作るために、企画書の段階で自分でぬいぐるみを縫ったり、 Tシャツにアイロンプリントしたりしたんですよ。

有野自分で縫ったりですか!でも、実際にグッズが作られたのって、だいぶ後ですよね。

岩谷アメリカで大ヒットしてからですね。それからはいろんなキャラクター商品が出ましたよ。 ネクタイやら、電話やら、ゴルフボールやら。

有野そういえばアメリカでアニメになったんですよね。

岩谷ええ。しかも瞬間最高視聴率が56%。 その頃、7歳の子供がパックマンのアニメを見てたとすると現在37歳。ちょうどその人の子供が今、同じような年になるので、 お父さんは昔パックマンのアニメ見てたんだよって言いながら子供と一緒にパックマンで遊ぶ。こんな風に世代がうまく回って行くといいですよね。

有野いいですね。

岩谷実は、ビデオゲームからこういうキャラクター商品が出たのってパックマンが初めてなんです。 立って遊ぶタイプのアップライトっていう筐体をご存知ですか。その側板に手足の生えたパックマンのイラストが描かれたのが最初で、 確かマイクを持って歌を歌ってたんじゃないかな。

有野なるほど、イラストからですか。でも、アップライト筐体って横に並べて置くから、見えないことも多いんじゃないですか?

岩谷そうそう。端っこに置いてあれば見えるんですけどね(笑)。


有野パックマンって昔からずっと黄色ですよね。そもそもなんで黄色にしたんですか。

岩谷平和のシンボルにも使われるように、黄色というのは敵でもない味方でもない、「ニュートラルな色」なんですよ。

有野なるほど。形はピザからなんですよね。ピザのチーズの黄色から来たのかと思ってました。

岩谷確かにピザのイメージとしての黄色もあったかもしれないですね。

有野普通のゲームやったら、効果が変わった時にピンクや緑になったりするじゃないですか。そういうのはしないんですか。

岩谷しないですね。4色のカラフルなゴーストがいるので、あえて主人公は黄色で統一しています。 一番困るのが一画面でパックマンが何匹も出てくる時です。「パックマンvs.」という複数人で同時にプレイするパックマンのゲームがありまして、 それを作った時に自分のパックマンがわかるように色を変えようと言われましたが、嫌だと断りました。

有野でも、対戦ものやろうとしたらどうすればいいんでしょうね?旗とか薄い黄色ですかね?

岩谷旗は格好悪いし、薄い黄色では違いが益々分からないですね(笑)。

有野じゃあ、しっぽですかね。

岩谷それはいいかも(笑)。複数人で同時プレイっていうアイデアはよく出るんですよ。その時にいつもどうやって自分を見分けるかが議論になる。 でも、やっぱり黄色以外の色にするのはダメだよなぁってなるんですよ。 そのうち技術の進歩で、フィルターつき眼鏡をかけると自分のパックマンしか見えないというものが出てくるかも。 そういう風に技術で解決するという方法もあります。

有野そこまでして黄色以外は嫌なんですか(笑)。技術の方が進歩してくれ!って言い切れるのは凄い愛情ですね。 そこまでこだわるんやったら、いっそのこと全員黄色にして「オレどれや?」ぐらいでいいかもしれないですね。 見た目でわからなくても、 コントローラー触ればすぐわかりますから。

岩谷はい。そこまでしても黄色のままがいいんです(笑)。


有野そもそも、何で「パックマン」って名前になったんですか?

岩谷マンガなどによくあるモノを食べる時の「パクパク」って言う擬音からです。

有野ほかに候補は色々出たんですか?「ムンズマン」とか「モグモグ」とか(笑)。

岩谷「パックリ」とかね。色々候補は出ましたよ。会議はしましたけど、すぐに「パックマン」って決まりましたね。

有野他のゲームでもすんなり決まるんですか?

岩谷「リッジレーサー」や「ポールポジション」のレースゲームなんかも、もう迷い無くこれにしようって決まりましたね。 「ゼビウス」もそうでした。まだタイトルが決まっていない時に、一人ずつ候補を出していったことがあるんです。 でも、誰かが「ゼビウス」って言った瞬間に「それだ!」って決まっちゃってましたね。

有野満場一致ですか。

岩谷ええ。「ゼビウス」っていう言葉がすっと入ってきたんです。

有野こういったネーミング作業というのは、開発中のどの段階でするんですか?キャラクターが全部できあがった頃ですか。

岩谷大体、7、8割くらいできた頃でしょうかね?印刷物の関係もあるので、タイトルだけはもうちょっと早めに決めますけどね。 タイトルは、大体50%くらい出来たときですね。

有野へええ、何となく全体の構成ができてくる頃には。もうタイトルを決めなきゃならないという感じなんですね。

岩谷パックマンの名前についてはもう一つエピソードがあって、パックマンの綴りは、最初日本では「PUCKMAN」だったんですよね。 アメリカで契約をするときにそれじゃ駄目だってだって言われたんですよ。

有野何でなんですか。

岩谷「P」が少し欠けると「F」になっちゃうということなんですよ。

有野欠けさせへんかったらええやんって思うけど、絶対、誰かがいたずらして、ガリガリしよるってことですか。

岩谷そうそう。で、アメリカの人と相談しながら「PAC」ならどうですかということで、「PACMAN」になったんです。 それがそのまま逆輸入される形で日本でも「PACMAN」と表記することになりました。「パックマン」というカタカナはそのままですけどね。

有野海外でも女の人のウケはいいんですか。

岩谷いいですよ。老若男女といいますか、本当に多くの人が抵抗感なく受け入れることのできるキャラクターです。 4方向レバーしかないのでゲームのルールも簡単ですし、北米だけではなく、ヨーロッパでもアジアでも、 太平洋のど真ん中の小さな島国でも知られている、とにかく間口の広いゲームです。

有野新しいのが出てもキャラクターとルールは、ほとんど変わらないですしね。

岩谷そうなんです。そういう意味ではスタンダードナンバーですね。

岩谷徹(いわたに とおる)

1955年1月25日/東京都出身 ゲームクリエイター

「パックマン」の生みの親として知られる。 他にはナムコのビデオゲーム第1弾となる「ジービー」の開発 続編の「ボムビー」のゲームデザイン、「キューティQ」のグラフィックデザインなどを手がけるプロデューサーとしての作品は 「ドラゴンバスター」、「源平討魔伝」、「リッジレーサー」、「アルペンレーサー」、「タイムクライシス」 現在は東京工芸大学芸術学部教授、デジタルゲーム学会 理事、(株)バンダイナムコゲームス フェロー。

有野晋哉(ありの しんや)

1972年2月25日/大阪府出身 お笑いコンビよゐこのボケ担当

趣味はテレビゲーム フジテレビのバラエティ「ゲームセンターCX」において、懐かしのゲームのクリアを目指す「有野の挑戦」コーナーを持つ。 得意ゲームはパズル系。苦手ゲームはシューティング系。しりとり八段(二、四、九期竜王) 有吉弘行に付けられたあだ名はファミコン死にボクロ。
「よゐこライヴ2010~80年代を駆け抜けた君に贈る80'sネタ祭~」
日程:2月27日(土), 28日(日)
場所:新宿安田生命ホール

photo by IKEDA MASANORI