
パックマン生みの親の目前でプレイするという貴重な体験に興奮しきりの有野さん、続いて世界大会でも使われたパックマンチャンピオンシップエディションに挑戦です。21世紀型のパックマンをプレイした感想はいかがでしょうか?

岩谷この後も「パックランド」や「パックマンワールド」といった、立体で手足の生えたパックマンとゴーストとのアクションゲームが出る一方、 迷路が立体的になった「パックマニア」といった本来の面クリア型ゲームもどんどん進化していきます。 後者の最新版が、この「パックマンチャンピオンズシップエディション」なんです。 これはパックマンの原点に戻りつつも進化したものを作ろうと、スタッフが一生懸命考えてくれたものです。 画面がとてもきれいで、スピード感があって、なおかつ面クリアが目的ではなくタイムアウト制です。結構評判も良く、 2ちゃんねるで叩かれなかった唯一のゲームなんですよ。 「またパックマンか…」と期待値が低かったのかもしれないですけどね(笑)。
(ここで有野さん、「パックマンチャンピオンズシップエディション」のプレイを開始します)
有野こらきれいやわ。これは夜のイメージですか?
岩谷ええ、きれいに見せるためのネオン風の効果を使ってます。このユラユラ感やネオン感がいいですよね。
(ゲームに熱中する有野さん。画面のタイマーに気付きます)
有野これカウントダウンしてますね?
岩谷そうです、そうです。時間内に何点取れるかで競うんです。 今までは、ゴーストの連続食いでの点数もオリジナルでは1600点までだったんですけど、これはもっと点数が取れます。 このゲームは2年くらい前に出たんですが、当時Xbox LIVEでかなりたくさんダウンロードされました。
(残念、有野さんゲームオーバーです。今回の成績が棒グラフで表示されます)
岩谷このようにクッキーを食べた点数、ゴーストをやっつけた点数、チェリーなどのフルーツを取った点数が時系列に沿って棒グラフで表示されるんですよ。 ワイド画面で作ってありますから解像度の高いモニターでも楽しめます。要するに、今の時代にあわせたんですね。
(有野さん続けてもう一度スタートボタンを押します)
有野このスピード感が気持ちいいです。どうしても最近のゲームって絵をリアルにしちゃうんですけど、 進化っていうのは、絵をディティールに凝るってことじゃなくて、こういう事なんですね。
岩谷そう、そういうことなんですよ。もともとパックマンはシンプルなデザインのシンプルなゲームとして進化してきてるんです。 これもゲーム的には初代とそんなに変わってないですよね。
有野確かにルールは一緒ですもんね。紺色っぽい迷路のイメージも同じだし。
(有野さんしばらく無言でゲームに集中します)
有野パックマンと敵のゴーストは、いつも仲いい5人で一緒ですね。(笑)。
岩谷ええ。パックマンとゴーストはトムとジェリーの「仲良くけんかしな」みたいな関係で、相手を食い殺したりしない。 「僕のクッキーを食べるなよ」って取り合いをしているだけなんですよ。
有野へえ、トムとジェリーって関係っていうのはあんまり知られてないですよね。 オープニングにムービーで普段は仲良くしてるんでっせっていうのを見せた方がいいんじゃないですか。
岩谷そうですね(笑)。
(コツを掴んだのか今度は順調に進み、パックマンの動きが速くなってきます)
有野しかしこれ、どんどんスピードが早くなっていきますよね。
岩谷パックマンは幅広いターゲットに向けて作っているので、最初は、あまりゲームが得意でない人でもできるように設計しています。 うまくなると、スピードがどんどん早くなっていく。そのことによって上級者でも熱くなれるんですね。 確かに2年前に出したこのゲームでワンステップ上がりましたが、今はこれのさらに進化したものを考えたいです。
有野パート2ですか?
岩谷いや、パート2じゃなくて新しいのがやりたいですね。しっぽが生えてるとかね(笑)。
有野それ見たら、僕「あ!」って言いますわ。
(ここで有野さん、岩谷さんのプレイが見たいとリクエストします)
有野ちょっとやってるとこ見せてもらっていいですか?
岩谷僕?あんまりうまくないですよ(笑)。
(というわけで岩谷さんのプレイがスタートします。これは貴重ですよ。 岩谷さんプレイするも、すぐにゴーストに食べられてしまいます)
岩谷だから私は駄目なんだって(笑)。
有野ほんまにあなたが作ったんですか(笑)?
岩谷これは若いスタッフが作って、僕は監修のような立場なので作ってないんです。 でも、オリジナルパックマンのほうも、そんなにプレイはうまくないですけどね(笑)。
有野そういえば、パックマンって弾とか撃たないですよね。
岩谷そうなんです。十時キーしか使ってないので携帯にも簡単に移植できるんですよ。
有野なるほど、ゆくゆくこういう時代がくるはずや!って30年前から携帯に移植することを見越してたんですか?
岩谷携帯電話が小さくなって普及するところまでは想像できたんですけど、 ゲームができるほど液晶がきれいになることまでは考えつかなかったですね。

有野これ世界中の人のランキングが見られるわけですよね。世界トップの人っていったい何点出してるんですか?
岩谷我々の想像の域を脱する点数ですよ。プレイ画面がYouTubeにアップされますからね。 2007年になりますが、チャンピオンシップエディションお披露目の時に世界各国のトップ取った人たちに集まってもらってニューヨークで世界大会をやったんですよ。 イギリスからは中学生くらいの子が来ました。
有野キン肉マンの超人オリンピックみたいな感じですか(笑)。でも、まだ発売前やったんですよね?
岩谷ええ。発売前に、あらかじめお試し版を配信しておいて、世界各国のトップを取った人たちを集めました。 各国のトップとは別枠で、Billy Mitchellっていうオリジナルパックマンの世界記録保持者も招待したんですよ。
有野その人は強かったんですか?
岩谷そうですね、まぁまぁ強かったですし、勘がいいですね。 世界大会で優勝したのがメキシコの30歳くらいの青年で、自分でゲーム会社をやってる人でした。最後にみんなで食事会をしたんです。 そこでメキシコのコロナビールを飲みながらチャンピオンの青年と話したんですが、本当まじめな青年でおもしろかったですね。
有野そうか。まじめじゃないとゲームはうまくならないですね(笑)。

有野パックマンってクッキーずっと食べてるじゃないですか。腹一杯にはならないんですか?ちょっと歩くのが遅くなるとか。
岩谷ゲームを作ってるとついつい色々やりたくなっちゃうんですけども、あえて排除するということも大事なんですよ。
有野例えば、発売ギリギリになってカットした要素なんてありますか?
岩谷いっぱいありますよ。ゲームってアイディアの部分だけが膨らんでしまうと、本来のコンセプトがズレていってしまうんですよ。 ですから、いつも断腸の思いでアイデアをカットしています。 例えば、ミサイルを撃つ面があってもいいんじゃないか、口から炎が出て攻撃できるのもいいんじゃないか、とかね。
有野今後、パックマンが攻撃できるようにはしないんですか?
岩谷アニメでも映画でも、実はヒーローっていうのはそんなには強い武器を持ってないんですよね。 例えば、スパイダーマンって基本的にクモの糸を出すことしかできないし、スーパーマンは空を飛ぶことくらいしかできない。 強くなるアイテムなりパワーなりがあればいいと思うんですが、基本的には一芸だけ持っていて、あとは結構弱い。
有野ほんまですね、ヒーローって攻めの武器的な才能がないんですね。
岩谷主人公をやたらめったら強くしないっていうのは、そういうヒーローものを見て育ってるからかもしれないですね。 あとパワークッキーで逆転するっていうのはポパイの影響ですね。普段は弱いけど、ほうれん草を食べると一定時間だけ強くなるっていう。 だからパワークッキーはほうれん草みたいなものなんですね。こうやって考えてみると、アニメと映画と漫画の影響ってとても大きいです。 これは、他のゲームクリエイターの人もそう仰ることが多いんですが、こういう小さい頃からの体験っていうのがゲーム作りにはとても強く影響してきます。 でも、ゲームのおもしろさを考えていくと、敵との戦いの中に駆け引き的な要素は追加したくなりますね。
有野なりますよね。敵が増えるとか分身するようになるとか。
岩谷そうですね。物を投げるとかまで含めて。これはパックマンに限らず、いろんなゲームで悩むところですよね。 多くはカットするけども、その中でも、これだけは入れてみようっていうアイデアでうまくいくゲームもあります。 でも、ゴテゴテつけていくタイプの変わり方だと行き詰まってしまう。チャンピオンズシップエディションみたいな進化が理想的な方法の一つかな、とは思っています。
有野確かにあれはきれいですよね。




