
対談もそろそろ終盤、お二人は「パックマンってどんなヤツ?」「ゲーム制作の現場って」といった興味深い話題でさらに盛り上がります。 最後に岩谷さんが語る将来のパックマンについての展望はファン必読ですよ。

岩谷さて、次はこれをプレイしてもらいましょうか
(岩谷さん1987年発売の「パックマニア」を取り出す)
有野3Dになってる!これは難しいですね。
岩谷ジャンプできるって、ついつい忘れちゃうんですよね。
有野忘れますね。パックマンって飛ばないもんやって思ってるから。あとパックマンってしゃべんないですね。 「もうこんなクッキーばっか食えるか!」とか言わないんですか(笑)。
岩谷アニメではしゃべってるんですけどね。
(有野さんステージをクリア。コーヒーブレイクの画面に)
岩谷オリジナルパックマンにもこういう寸劇が入ってるんですが、ゲームと関係ない事はやりたくないってプログラムの人には反対されたんですよ。 それをやることによってメリットがあるのかどうかって聞かれて、次のコーヒーブレイクを見たいと思ってゲームをプレイする人がきっと出てきます。 だから売上も上がりますって。あとは、ちょっとした休憩にもなるんですよね。面をクリアしてまたすぐ次の面っていうんじゃなくて、しばらく一息ついてもらうという。
有野基本的にパックマンはずっとこの形のままなんですか?
岩谷そうですね。いわゆるドット絵の雰囲気は残したいと思っています。もちろん現行のハードの性能をフルに使えば、 もっときれいな丸みを帯びさせたり、リアルなシワを作ったりすることもできますが、やっぱり表情が出るとパックマンじゃなくなる気がするんですね。
有野もっと無機質な方が良いってことですか。
岩谷無機質というか、できるだけシンプルな造形にしたいんです。パックマンは比較的いい奴なんだろうけども、 どういう性格か分からないところに魅力があると思っているので。
有野見ようによっては悪いやつですもんね。
岩谷悪いやつじゃないですけどね(笑)。
有野パックマンって基本的に拾い食いですよね。
岩谷そうそう、地面に落ちてるやつを拾い食いしてる。
有野クッキーはゴーストが置いてるんですか?
岩谷うん。ゴーストがきれいに自分の陣地に並べて喜んでるの。
有野じゃぁ、パックマンは勝手に食べてるんですか。やっぱり悪いやつじゃないですか(笑)。
岩谷パックマンは物事の善し悪しを考えないですからね。とにかくパックマンは食べる事しかない奴なんです。 例えば、お巡りさんが拳銃を持ってたとして、拳銃は悪い物だかからってパクッと拳銃だけ食べちゃうっていう性格です。 世の中の常識はあんまり知らなくって、拳銃だの核ミサイルだの悪い物をとにかく食べちゃうんです。 だからといって映画の中のヒーローのように、ちゃんとした考えがあったりするわけでもないんです。 そのパックマンが世の中の悪を食い尽くすという設定で、色々とストーリーを考えていきたいと思ってます。

有野一番最初のパックマンって何人で作ったんですか。
岩谷パックマンは企画とデザインが私で、後はプログラマーと音楽を担当したのが1人ずつ。以上おしまいなんですよ。
有野3人ですか!
岩谷はい。これだけ少ないとコンセプトの共有も問題なくできますしね。 細かく言うと、コンピュータボードの設計が1人、筐体の電気回路やレバーの機械などのいわゆるエレメカの関係の人が1、2人、 側面の絵を描くイラストレーターが1人、多く見積もっても10人位ですかね。
有野なるほど、コアの部分は3人なんですね。その3人でどれくらいの期間で作られたんですか?
岩谷やり始めてから1年半くらいかな。それ以上長くなると逆にモチベーションが維持できなくなってくるので、 そのくらいにしておかないと。開発してる後半は、大体完成のイメージがありますので作業しつつ、 次のゲームの構想を忘れないように書き留めながら考えちゃいますね。
有野なるほど。途中で投げ出したくなったりしないんですか?。
岩谷しないですね。こういう物作りの苦労話ができる人って、物を作る楽しみを知ってるってことなので、 またやってみようってなるんですよね。山を越えて、しんどかったプロジェクトを終えた人のほうが生き生きとしてますよね。 プレッシャーというか、締め切りに間に合わないとか、あるトラブルが発生して残りの期間を考えると、まずこれは無理だと判断されただとか、 産みの苦しみを味わってる人はやっぱりその後、生き生きしてますよね。
有野ゲームにも締め切りっていうのがあるんですね。それはどのくらい前に言われるんですか。
岩谷スタートした時にクリスマス商戦に間に合わせるぞ、とか東京ゲームショーに間に合わせるぞとか、そういう締め切りがあります。 ところが、パックマンやギャラガの時代の時は、開発の締め切りがなかったんです。開発任せなんですね。 営業の人たちや経営の人たちはゲームの開発のことがよくわからないので、開発の若い人たちに任せちゃえと。 こちらのほうもそれでいい気になっちゃって、いつまでも開発を続けちゃうんですよ。 今は締め切りを守らないと会社は成り立たないので、詰め切れていない状態の中途半端なゲームが出ちゃってるものも見かけるんですよね。 詰めなきゃ行けないはずなのに、今期中に出さなきゃ行けないっていうんで出しちゃってるなっていうのもありますね。
有野これは、締め切りが間に合えへんなって分かるのはいつ頃ですか。自分の原稿書くときやったら、朝までに書き上げれるかくらいやけど、 ゲーム作りは人が何人かおるから、その人たちの足並みも見んとあかんってことですもんね。
岩谷そうですね。ですから、進行管理をする人、いわゆる開発では工程管理の人は絶対に大事です。 プロデューサーも遅れを隠してる人たちがいるなっていうことに気がつきますね。 どうやってもこの半年じゃ無理ってわかった時にプロデューサーがどう考えるかってことですが、 まず、締め切り厳守して仕様を圧縮する、人を増やすという作戦で行く人と、本当に良い物を作りたいんだって泣きついて締め切りを延ばす人とか、 それは色々です。でも、今の時代は締め切りはかなり第一になりますね。

有野パックマンって30年間このままじゃないですか。さっきで出来るけどって言うてはった小じわとかヒゲとか作んないですか(笑)。 よく見ると白髪はえてるんですよーとか。
岩谷例えば、長寿アニメのキャラクターって、何十年たってもその主人公の永遠の魅力を維持しながら鮮度が保たれてるってことがあるじゃないですか。
パックマンもそんなキャラクターにしていきたいと思ってますし、こうして30年をむかえられたということは、ある程度成功しているんじゃないかなと思っています。
その理由を振り返って考えてみると、親しみの持てるかわいいキャラクターだとか、私にもできそうって思わせるゲームのシンプルさとか、
色々な要素があると思うんですが、一番大きいのは「ゲーム性の親切さ」だと思うんですよね。
例えば、パックマンが捕まりそうになるとゴーストがどこかにふっと行ってしまったり、1回死んでから立ち上がった時にはゴーストの攻めが弱いとか、
そういう目に見えないところですね。このような痒いところに手が届く設計をいたる所にしてるわけです。見た目はシンプル。
でも、裏には細かい工夫がたくさん隠されているというサービス精神があるから30年もってると思うんです。
だから、これからも30年を迎えて、じゃぁ50年たった時にどう進化させていくかっていうのは、考えて行きたいですよね。
この30年の中でいろんなゲームのタイトルが出てきていますので、そこに1つの進化のヒントがすでに出てるんじゃないかと思いますね。
それは、これから若い人たちが考えていく事だと思います。
有野50年たっても100年たってもパックマンは黄色って事は変わらないんですね。
岩谷、有野ありがとうございました。



