
パックマン30周年を記念し、スチャダラパーさんとTOWA TEIさんによる記念楽曲が12月1日から配信開始された。今回はTOWA TEIさんに、楽曲「PAC IS BACK!」の製作過程について徹底的にお話しをうかがった。

ーー まずはパックマンとの出会いについて教えて下さい
TOWA TEIパックマンって発売はいつでしたっけ?
ーー 1980年ですね
TOWA TEIじゃ、僕は64年生まれだから高校生か。 僕はそもそも音楽が大嫌いだったんですよ。中三だったかなあ、そのころ僕ちょっと壊れかけてて、インベーダー(※1)にはまって身を滅ぼしそうになってたんです。もらったお年玉を全部すぐ使っちゃったりとか。 でも、やっぱり真面目な性格なので、勉強もしなきゃなと思ってた頃、模擬試験の帰りに寄った町田の駅前のレコード屋さんで、たまたま人民服を着て演奏するYMO(※2)のライブ映像を見たんですね。それを聞いた時に、インベーダーをやっているときの快感というか気持ちよさみたいなものが、音楽の中にあるって気付いたんです。 次の日走って近所のレコード屋さんに行って、ちょうどその頃発売されたYMOのセカンドアルバム(※3)を買いました。その後すぐファースト(※4)も買って、そっちにはもろゲームの音が入っているんですね。それで「あ、もうお金使ってゲームやらなくてもいいじゃん」と思っちゃったんですよ。
ーー ゲームをプレイする楽しさよりも音楽を聞く楽しさに目覚めたと言うことですか?
TOWA TEIそうそう。しかもゲームはゲーセンに行かなきゃできないけど、音楽って聞きながら勉強できるじゃないですか。これだ、と思ってYMOのファースト・セカンドをほんとによく聞くようになったんですね。YMOってインスト(※5)中心で歌詞も英語だったので、詩やメロディーよりも音色やアレンジが直接入ってくるんですね。 ちょっとパックマンからはそれちゃいましたけど、その時以来僕は音楽に夢中になり、ゲームをするということに対してモチベーションが落ちちゃったんです。 とは言えゲームをまったくやらなくなったわけではなく、友達と秋葉や渋谷に買い物に行ったり、家族旅行で温泉に行ったりした時に目に付いたゲームをやってましたね。ちょっとしたYMOからの浮気みたいな感じですかね(笑)。
ーー その時にパックマンをプレイされたのですか?
TOWA TEIええ。パックマンとかギャラクシアンとか。今から考えると、インベーダーもパックマンも電子音ということで好きだったのでしょうね。ゲームをクリアして達成感を感じるのではなく、その音に包まれていたかったからなのかもしれません。 だから今回音素材を頂いた時にもパックマンのBGMははっきりと頭に残っていましたね。やっぱりよくできているな、と。でもそこからプッツリとゲームをやったという記憶は飛んでいます。今覚えているのは息子がやっている「太鼓の達人」ですかね(笑)。もちろん息子には勝ちましたけどね。音楽ものなんで、一応。

ーー では「PAC IS BACK!」のお話しを聞かせてください
TOWA TEIまずお話しを頂いてすごくうれしかったですね。正直断る理由が全然ないなと思いました。ただ、やっぱり敷居は少し高かったです。 と言うのも、パックマンは誰もが知っている大ネタ(※6)ですよね。大ネタ感を残しつつどこに着地したらいいのかなとまずは左脳的に考えました。 あんまり今のトレンドのダンスミュージックにカチっとはめちゃうのもイージーだなと思ったので、なんというかこの曲が30年後のネタ元、オリジナルになるようなものにしたいなと考えました。だからいただいた音素材をほぼそのまま使うことにしたんです。
ーー 確かに曲の冒頭にはパックマンのオープニングミュージックがそのまま使われてますね。
TOWA TEI今まで僕はDJとして数多のパックマンネタのレコード(※7)をかけてきましたが、せっかく今回はオフィシャルなんだから、わからないように使うんじゃなく、ど頭でバーンと使ったろうと思って(笑)、大ネタをアンダーグラウンドに処理するのは誰でもできると思うのでそうはしたくなかったんです。
ーー それ以外の素材は多少加工されていますよね
TOWA TEIそうですね。ど頭といちばん最後だけ素材そのままで、それ以外は素材を単音に千切ってシャッフルをかけています(※8)。キーもそのままだとちょっと遅かったんで半音だったとおもうんですが上げてますね。
ーー 声ネタも印象的ですよね
TOWA TEI「PAC IS BACK」と言ってるのはマッキントーク(※9)です。Mac SE(※10)を引っ張り出してきてこのひとことだけ言わせました。「ウノ・ドス・トレス」、「アインス、ツヴァイ、ドライ」と各国語で数を数えているのは電子翻訳機です。ワールドワイド感を出したくて(笑)。
ーー ドメスティックなモノではなく世界中に向けたものにしようという意識はあったのですか?
TOWA TEI正直あまり国内国外とか意識したことはないんですよね。自分がおもしろがれる曲ができれば、親しい友達の何人かはおもしろいと思ってくれるし、親しい友達は世界中にいますからね。 まあ、パックマンが世界の共通言語になっているので、この曲も世界中の人に楽しんでもらえるんじゃないかとは思いますけどね。
ーー TEIさんの曲にはボーカルがあるものも多いですが、今回はそれは考えなかったんでしょうか?
TOWA TEIそうですねえ。これ「PAC IS BACK」って入ってますけどボーカルものじゃないですよね。いっしょに出るのがスチャダラパーさんと聞いて、やっぱり彼らは大ネタ使ったラップで来るだろうなというのは想像できたので、インストと思えるモノの方がいいかなとは考えたかも知れませんね。
ーー ビートについてはどうですか?
TOWA TEIビートはすごくオーソドックス、強いて言えばずっと変わらぬ初期ハウスに近い感じですね。僕のキャリアはハウスミュージックとほぼ同じくらいなんですが、そのあたりの感じというのは強いて言えば意識した気がします。

ーー 製作期間はどのくらいなんでしょうか?
TOWA TEI日記を読んでみると最初の1日2日、素材を取り込んでる時にちょっとハマれなかったことがあっただけで、後はささっとできましたね。正味1日半とかじゃないですかね。
ーー それは早いですね。
TOWA TEI集中すると早いですね。でも集中するまでがなかなか大変なんですよ。例えば仕事で曲を依頼されたとすると、だいたい一曲につき2週間くらいは時間を取ってるんですが、最初の10日間くらいはずっと温泉行ったりしてるんです。汗ダラダラ流して毛穴が開いてくるのを待つと。始めると早いですね。 時には、ああでもないこうでもないと試行錯誤してハマっちゃうこともあるんですけど、この曲に関してはメロディみたいなモノができた時点でほぼ完成しちゃいましたね。後は声ネタを加えるくらいでもういいかなと。 聞いた人やかける人(DJ)に「僕だったらもっとこういう音を足すのになあ」といったイマジネーションのスペースを残すために、あんまり詰め込まないで隙間を残すように心がけました。それはもうどんどん現場でやってくれればいいので。
ーー 曲を作ってみて、あらためてパックマンのイメージを聞かせて下さい
TOWA TEIあまり深くははまらず初心者のままで終わってる自分としては、頭で考えると言うよりも、直感的にできるすごく本能的なゲームだなという気がします。その根底にあるものも、クッキーを見たら食べるみたいなすごくシンプルなもので、意外と東洋思想かななんて思ったりします。 さっきの隙間の話しにも通じますが、あまりルールも多くないので、イマジネーションが逆に湧くというか、直感的に動けるってことがすごくイマジナリーかなっていう風に思います。そういう部分が好きなのかもしれないですね。僕は複雑なゲームは全然やらないですし、複雑なゲームは音楽作ることかなって気がしてますから。
ーー それでは最後に30周年を迎えたパックマンにメッセージをお願いします
TOWA TEIなんだろうなあ、究極にシンプルで王道なものを作り続けるのは、いちばん難しくていちばんおもしろいことだと思うのですが、それが30年間できたっていうのはすごいことだと思います。これだけ続いたということは、この先40年50年ときっと続いてくれるんじゃないでしょうか。僕に孫ができたときいっしょにパックマンをプレイして「この曲じいちゃんが作ったんだ」とか言ってみたいですね。信じてもらえなくて「じいちゃん嘘つき」って言われたりして(笑)。

アーティスト: TOWA TEI
タイトル: PAC IS BACK!
発売元: バンダイビジュアル株式会社
価格: 200円
※価格は、iTunes Store(日本)における、アルバム販売のものです。
発売日: 2010年12月01日配信開始

TOWA TEIが電子バイヤーとして立ち上げた"電子セレクトショップ"。音楽を中心に映像やアートワークや文章など、様々なアーティストによるクリエイションを配信リリースすると共に、参加アーティストのニュースやジャーナルを掲載するポータル・サイトとして運営される。第1弾配信は12/24。TOWA TEIの過去2アルバムの音源だけを使用したメガミックスをはじめ、DJ FUMIYAプロデュースによる女子2人組ユニットBAKUBAKU DOKINのデビューEP、INO hidefumiの未発表音源、エンライトメントによるVJ映像作品がリリースされる。

![]() |
TOWA TEI(テイ・トウワ) DJ、アーティスト 1990年、"ディー・ライト"のメンバーとして米エレクトラよりデビュー。1994年、『Future Listening!』でソロ・デビュー。楽曲プロデュース、映画音楽制作、CM楽曲制作などのほか、コラボレーション・アイテムのブランディングなど活動は多岐に渡る。DJとしても、東京、京都での「MOTIVATION」、選曲重視の新パーティ「HOTEL H」など人気レギュラー・パーティや、国内外のクラブ、企業イベント、ビッグ・フェスへ出演している。2009年2月リリースの5th.アルバム『BIG FUN』、その制作日記を含む初の単行本『BOOK FUN』をリリース。最新コンピ『MOTIVATION H compiled by DJ TOWA TEI』が絶賛発売中。来年発売予定のニュー・アルバムからの先行シングル「Marvelous with YURICO」(モバゲータウンCM曲)も配信中。12/1には映像、電子書籍などの配信レーベルMACH (www.machbeat.com)をスタート。初回配信は12/24。自身の作品を2人のDJがメガミックスした「TOWA TEI FLASH & BIG FUN MEGAMIX #1 by DJ UPPERCUT」「~#2 by HOME CUT」をはじめ、それら2音源にENLGHTENMENTが映像をつけた作品、DJ FUMIYAプロデュースによる新人BAKUBAKU DOKIN『DEBUT EP』、INO hidefumiの未発表音源『LIGHT』、計6作品を一挙リリースする。 |
|
photo by IKEDA MASANORI |




※1 インベーダー:
1978年にタイトーから発売されたアーケードゲーム「スペースインベーダー」のこと
※2 YMO(Yellow Magic Orchestra):
細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏によって1978年に結成されたグループ。シンセサイザーを大胆に導入しテクノポップと呼ばれるジャンルの中心となった。
※3 セカンド:
YMOのセカンドアルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」のこと。一般的によく知られている「ライディーン」、「テクノポリス」といった楽曲が収録されている。
※4 ファースト:
YMOのファーストアルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」のこと。アーケードゲーム「サーカス」や「スペースインベーダー」の音をシンセサイザーで表現した楽曲が収録されている。
※5 インスト:
インストゥルメンタルの略。ここではボーカルのない音楽のことを指している。
※6 大ネタ:
ここでいうネタとはサンプリングの元素材を指している。大ネタとは誰もが知っている有名な素材からのサンプリングのこと。
※7 パックマンネタのレコード:
パックマンのゲームからサンプリングした音を使用しているレコードのこと。ハウスやテクノ、ヒップホップなど様々なジャンルのものがあるが、そのほとんどは無許諾のもの。
※8 素材を単音に千切ってシャッフルをかけています:
この曲の中盤では、サンプリングしたフレーズ(パックマンがクッキーを食べている音)をそのまま使用するのではなく、より細かな単位に分割し、再構成することによって跳ねるような効果を出している。
※9 マッキントーク
(MacInTalk):
アップルのコンピューター、マッキントッシュに音声を読み上げさせるために使われる機能拡張ファイル、またはそれを利用する「Text-to-Speech」などのプログラムのこと。
※10 Mac SE:
1987年に発売された一体型のマッキントッシュ。