「PAC-MAN Championship Edition DX(以下PAC-MAN CE DX)」は2007年に発表された「PAC-MAN Championship Edition(以下PAC-MAN CE)」をベースに、たくさんの新しいフィーチャーを追加し、2010年11月に配信が開始された最新型のパックマンだ。リリースされてまだ数ヶ月しかたっていないが早くも世界中で人気が沸騰し、アメリカのゲーム批評サイトIGNが主催するアワードで3部門を受賞するなど高い評価を得ている。本作のアピールポイントや開発秘話などについてプロデューサーの田村さんにお話しを伺った。


ーー このゲームの企画はどのようにして生まれたのでしょうか

田村パックマン30周年のタイミングで、好評をいただいたPAC-MAN CEの続編を作ろうというのがそもそものきっかけですが、バンダイナムコゲームズが新たに立ち上げた「 ナムコジェネレーションズ」プロジェクトの第1弾という意味合いもあります。このプロジェクトは、旧ナムコでリリースした数々の古き良き名作ゲームを現代の技術とセンスで作り直し、新たな価値を付加してリリースしていこうというものですが、やはりナムコと言えば第一弾はパックマンだろうと言うことで。

ーー ゲームの基本的なルールは前作と同じですよね。

田村はい。横長のメイズ(迷路)の中でパックマンを操作し、ゴーストの追撃をかわしながらクッキーやフルーツを食べていき、制限時間内でスコアを競うタイムトライアルゲームというところはまったく変わっていません。しかし、そこに加えて前作にはない様々なフィーチャーが新たに追加されており、内容はタイトル通り「デラックス」になっています。

ーー ではそれぞれのフィーチャーについて簡単にご説明をお願いします。まずスローモーションとは?


▲スローモーション

田村パックマンがゴーストに挟まれそうになるなどピンチになると、自動的にスローモーション演出が発生し、初心者でも逃げやすくなります。イメージとしては映画マトリックスの銃弾を避けるシーンを思い浮かべていただければと思います。この演出によって生存率が大幅に高まり、ゲームがあまり得意でない人も最後までゲームを楽しむことができるようになります。 ただし、スローモーション中もタイマーは動いているため上級者にとってはタイムロスとなります。

ーー 次にBOMB(ボム)ですね。


▲ボム

田村今までのパックマンは両側からゴーストに挟まれてしまうとまず助かりません。しかし挟まれた時にBOMB(ボム)ボタンを押すと爆弾が爆発してゴーストは巣に戻ってしまうためミスになりません。回数制限はありますが、これも得意でない人のための救済措置ですね。 ただし、BOMB(ボム)を使うと一時的にゲームのスピードが遅くなってしまうため、こちらも上級者にとってはタイムロスとなります。

ーー ではトレインというのは?


▲トレイン

田村はい、PAC-MAN CE DXにはいつもの4匹の他にも眠りゴーストという新しいゴーストが登場します。眠りゴーストはパックマンが近付くと目を覚まして追いかけてくるので、今までのパックマンではあり得ない数のゴーストが行列(トレイン)になって追いかけてくるのです。その状態でパワークッキーを食べると、トレインになったモンスターを一気にやっつけることができ、高得点を得ることができます。これが最高に気持ちいい、まさにデラックスな瞬間ですよ。



▲ダークネス


▲ハイウェイ

ーー ゲームが苦手な人でも楽しめるような機能が多いですね

田村はい。前作はゲームが得意な人からの評価はとても高いのですが、あまり上手でない人は制限時間(5分間)までゲームを続けることができないため、醍醐味がうまく伝わらなかったという反省があったので、今回はもうすこし敷居を低くし、欲張りですが上手な人もそうでない人も両方楽しめるものを作ろうと考えました。 リリースする前にはゲームが苦手な複数の女性にテストプレイしてもらったのですが、9割以上の方が5分間完走することができました。初代パックマンの1面もクリアできないような人でも、2回目3回目でどんどん上手になっていき、最初から20万点以上のスコアが出せるのでたいへん喜んでもらえたんです。一方上手な人はやればやるほどスコアが上がっていきます。上手な人もそうでない人も何度も楽しめる出来になったと思います。

ーー しかも苦手な人のための救済措置が同時に上手な人へのペナルティになっている

田村はい、実はこれ副産物なんですよ。最初はとにかく苦手な人に5分間完走してもらうためだけに作った機能だったのですが、それが上手い人にとってのペナルティになり戦略要素になったのです。 例えば今ハイスコアのトップ集団は210万点周辺で競っているのですが、そのレベルになると1回スローモーションが発生しただけで数千点の差が出てしまうんです。ですからスローモーションを発生させないためにボムを使う事こともあります。

ーー ペナルティであり戦略要素ということですね。

田村ええ。前作ではフルーツを食べて得点を稼ぐか、4匹のゴーストを連続して倒すこと(ゴーストコンボ)で稼ぐかその時その時でプレイヤーが判断していたのですが、今回はそれに加えて眠りゴーストを起こし、トレインを作って稼ぐという要素が増えました。この起こすタイミングも重要な戦略要素です。大量のゴーストを引き連れ一気に逆転を狙うのか、それともあえて起こさずに残しておき短くコンボを繋げていくのかといった選択肢があり得るわけです。まだまだハイスコアは更新され続けています。いくらでも考える要素は残っていますよ。


ーー ゲーム内容をカスタマイズすることもできるとか。

田村はい。例えば遊べるコースは前作を踏襲した「チャンピオンシップⅡ」以外にもたくさん用意されていますし、パックマンのビジュアルやBGMを変えることもできます。また5分間のスコアアタック以外にも10分間のスコアアタックや、連続して何匹のゴーストを食べられるかを競うゴーストコンボといったゲーム形式を選ぶこともできます。

ーー 10分って長くないですか?

田村これも副産物のひとつなのですが、前作だと5分がいっぱいいっぱいだったと思うんです。でも今回は救済処置もありますし意外に10分連続して遊んでもだいじょうぶなんですよ。 毎回同じゲームではなく、他のいろいろなゲームを遊ぶこともできる。すべてにおいてデラックス、特盛りですよ。

ーー 開発で苦労されたことはありますか?

田村ゲームバランスに尽きますね。繰り返しになりますが、ゲームが得意でない人にもクリアの喜びを知ってもらうということが一番の課題でした。とは言えそちらに傾きすぎると上級者が物足りなくなる。シーソーのようなものですね。この部分を最後までものすごく時間をかけて調整しました。ある意味そこがすべてですね。その甲斐あって自分達で作っといてなんですが、めちゃくちゃおもしろくできちゃいました。

ーー 相当の自信作ということですね。

田村ええ。いろいろな意味でパックマンの殻をブチ破っているところは自覚しています。でもやはりこのゲームはどこを切ってもパックマンなんですよ。正当進化であるというところはやっぱり意識しました。30年前から遊んでいた人にも絶対楽しんでもらえる自信はあります。 私の中ではこのゲームを初代パックマンのようにどのプラットフォームでも遊ぶことのできる、次のスタンダードにしたいと考えています。

ーー 具体的にはなにか次の計画はありますか?

田村はい。実はもう次のことを考えています。

ーー おお!なんでしょう?!

田村残念ながら現時点ではなにも言えません(笑)。言えませんがパックマンはこれからもさらに進化していきますのでご期待下さい。


田村俊彦

バンダイナムコゲームス プロデューサー

photo by IKEDA MASANORI